『From to』イベントを振り返って
「漆のこと考えていたら、いつしか環境について考えるようになりました」
プロジェクトを始動しようと思ったキッカケは、この想いからでした。
サーフィンやスノーボード、海や山で遊び過ごす中、自然の素晴らしさや偉大さを感じるようになり、子供が産まれて、この楽しさや自然の大切さを子供たち次の世代にも残したいという思いも強くなりました。
しかし、私たち人間は何気ない日常生活の中で知らぬ間に地球を汚し、自然環境を悪化させている。
私たちは地球が回復するより、はるかに早いスピードで地球を消費している。
大きなことは出来ないが、今自分たちに出来ることは何か?と考えるようになった。
漆屋として日々接する漆。
天然素材である漆には様々な魅力、そして可能性がある。
完成された漆製品が美しいのは言うまでもないですが、私はその素材としての魅力に引き込まれた一人。
古くは縄文時代から使われ続けてきた漆。
その素材の持つ魅力を、漆屋の観点から伝えることが、自然の大切さを見つめ直すことにつながり、地球環境保全を考える良いきっかけになるはずだと考えました。
「木を植え、育て、採取する」。
樹液である漆は、この循環を壊さなければ枯渇しない循環可能な地球に優しい資源。
その漆を精製するのが私たち漆屋の仕事。
日々の温度湿度に大きく左右され、まさに自然と向き合いながら漆は出来上がる。
そこが、天然塗料故の難しさであり面白さでもある。
そして漆が作り出す独特の塗膜は、しっとりと人の肌に馴染み、使い込むことで味わい深い艶や風合いになっていく。
物によっては傷も一つの味となり、劣化する様も美しく、カッコいい。傷んだり、壊れても修復して繰り返し使う。
天然だからこそ、木も一本一本個性があるし、使い手によって十人十色の思い出が出来る。
漆は、木を植え、育てるところから、使い込んで、塗り替え、また使い続けるところまで、全てのシーンに物語がある。
こうした漆の天然素材としての魅力やストーリー性は、自然の中で遊び、暮らす人々に共感してもらえるのではないか。
そこから新たな価値観が芽生え、漆と漆の文化を守ることに繋がっていくのではないかと考え、「FROM TO」のプロジェクトが始まりました。
山から海へ。自然から人の手へ。私たちから次の世代へ。
本来はつながっているはずなのに、現代社会の中では離れてしまっている。
そんなものやことがたくさんあります。
「FROM TO」は、ばらばらになった“FROM”と“TO”を新しいかたちでつなぎ直す、そして活動を通じて自然の大切さ、地球と人との付き合い方を見直すキッカケとなるようにという想いからスタートしました。
最初の試みとして始まったのが、「From surfing to traditional crafts.」。
サーフィンから工芸へ。日本各地、そして海外でも上映会やワークショップを重ねました。また、イベントでは出来る限りゴミを出さしたくないという想いを松見 拓也さん、野口卓海さんのアイデアで会期が、おわって回収したら何か新しいものに作りかえる事ができるように、ポスターを布で制作しました。
Tom Wegener氏の来日を記念してのトークイベント・上映会・レセプションパーティでは、多くの方が来場いただきました。
イベントでは、ごみをできるだけ出したくない思いから、壬生モクレンのマリエさん 、やっこさんのアイデアでお皿をパンで作ってもらいました!
2日間の滞在型のワークショップ「Wegener Surf Stay 」@京北も開催。
全国から海と自然を愛するサーファーたちが、山間の京北に集まり、Tom Wegener氏と共に京北の自然の中で滞在し、ごはんを食べ、話し、PAIPO(木製ボディボード)の制作に挑戦しました。
お昼は、「にじいろごはん」が参加者のお弁当も作ってくれました!買うと容器がゴミになって捨てられてしまう。ゴミを出さないように食べた後は洗って容器も回収しました。地域の方々の協力があって、できた活動です。本当にありがとうございました。
お酒は「一杯のビールで、地球を救う」がコンセプトのアウトドアブランド・パタゴニアのLongRoot。名前の「長い根」の意味になっいる、 何年も成長できる多年生小麦「カーンザ」も使用していて、食を通じて環境改善させていこうという考えに、すごく共感!ハートランドも準備していて、こちらも容器を回収してゴミを出さないようにしました。
小さなアクションが大きなうねりになることを想像して
今できることを少しづつ。カタチにしていく。
その中で、繋がれた人達と共感し、動いていける事に嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
もう一つ環境への取り組みとして紹介したい事が!
今回のイベントで使用した布ポスターは、イベント終了後に全て回収。当時インターン生として来てくれた金沢美術工芸大学の緒形蒔子さんが、再利用してエプロンやバックを制作してくれたのです。インターン中のイベントのサポートやイラスト制作と、頼もしい存在でした。
制作してくれたエプロンやバックは、大阪の阪急うめだ店にて開催された『漆の未来を見てほしい日本漆山脈 forever』にて展示・着用しました。こうやって、新しいものとしてカタチになった事は本当に嬉しいし、これからも増えていけるように続けていかなきゃと改めて感じました。
追記
京都芸術大学の服飾専攻の学生さんたちも、この布ポスターを利用して、面白いものを作ってくれました。
↓↓↓
https://www.urushinoippo.com/blog/2022/3/17/from-to
小さな動きかもしれないですが、まずは自分達の周りから環境について出来ることを行動していきたい。
その中から同じ想いの人達と繋がっていき、少しづつ大きな動きが実現できたらと考えています。