黒の秘密を話に INAXライブミュージアムへ
2018年3月17日
焼き物で有名な愛知県常滑市にあるINAXライブミュージアムへいってきました。
保全工事が終わったばかりの大正時代に土管を焼いていた窯の煙突
現在開催中の企画展 「天然黒ぐろ―鉄と炭素のものがたり」
(会期:2017年12月9日~2018年4月10日)
こちらの公開講座「黒の漆 基礎からわかる漆の見どころ」でお話しさせて頂きました。
今回1時間半の講座には漆を扱うプロの方から、漆をあまり知らない一般の方も来られると聞き、皆さんに興味を持ってもらえるような時間にしたいなと思っていました。
漆屋なりに漆の黒の秘密とおもしろさがお伝えできればと簡単な手グロメをしながら漆の黒の原理を説明することにしてみました。
最初は原料のお話
日本の漆使用量はその98%を中国産を中心とした外国産に頼っています。
でもあんまり知られることのない中国の産地。
こちらをご紹介させて頂きました。
彼らの漆なくては成り立たない日本の漆
日本と同じように木の問題、掻き手の問題を抱えながらも良質の漆を採るために努力してくれています。
現在、需要の激減した国産漆を増やそうと様々な動きが始まっています。
中国産漆に助けてもらいながら、少しずつ確実に国産漆を増やしていく。
国産漆が増えたから中国産漆が減るというのではなく、国産漆が増えた分だけ漆の使用量が増えるような漆の需要を日本中、世界中で育てていきたいものです。
漆の黒の秘密へ
漆の黒の変化をまじかで見てもらうために手グロメをしてみました。
ビーカーに生漆を入れて、水酸化鉄投入
ぐるぐる混ぜて反応させていきます。
カフェオレから薄いねずみ色濃いグレーへと変化していきます。
これを少量とってガラス板で手グロメ
指の熱で漆中の水分を取っていきます。
漆の黒は実は透明なんです。
顔料を入れて黒くする化学塗料は遮蔽された黒になるのに比べて、透明の黒の重なりである漆の黒は深みがあり、光が届かなくなる深海の黒のようなイメージが私にはあります。
透きの漆を使って漆の塗膜の透けと明度の説明など
漆の塗膜は精製する漆の粒子の細かさで艶や濁り具合が変わります。
塗膜になった時、その濁り具合も黒に影響することなどをご説明
基礎といいながら、少しマニアックだったかもしれませんが、終了後に頂いたアンケートでは楽しんで頂けたような声もあり一安心。
私たちが毎日行う漆の精製作業「クロメ」、それは日々の温湿度にも影響される自然とのバランスを考えて行う作業。少しの変化を与えてやることで様々な艶や乾きを作り出すことができます。
何年やっても、もちろん完全にコントロールできるものではなく振り回されることもしばしばありますが、そこが漆の面白い所でもあると私は感じています。
こういった機会が、漆への興味に少しでも繋がれば漆屋冥利につきますが、まずは伝え方の練習ですね。