【ふきうるしキット】パッケージは米袋。京都芸術大学の学生がデザイン。
『ふきうるしキット』開発の裏話。
拭き漆とは、漆の木の樹液である「生漆」をお箸やお椀などの木地に摺り込んでは拭き上げる工程を繰り返し、艶を上げていく、最もシンプルな漆芸技法。このキットは、そんな拭き漆がご自宅で体験出来るトライアルキット。詳しい内容はコチラをご覧頂くとして、ココでは、開発の裏側を少しご紹介。
パッケージデザインは学生コンペで決定。
あえて漆を知らない若い世代の感性で。
このキットのコンセプトは「もっと漆を身近に」。
漆は、残念ながら現代の日常生活からかけ離れ、「高級品」「特別なモノ」「扱いにくい」といったイメージが強いんです。こうしたイメージを払拭し、漆をもっと身近に感じてもらえるにはどうしたらいいのか・・・
私たちは、これまでお箸や万年筆、スケートボードなどの「拭き漆」ワークショップを開催してきました。
木に漆を摺り込むことで変化する木目の表情。拭き漆を重ねれば重ねるほど艶が増すワクワク感。
自分で作る特別感と達成感。これらのワークショップで、子どもも大人も、参加者の反応を見て
「漆を好きになってもらうには拭き漆だ」
と実感しました。
もし、自分で気軽に漆器が作れたとしたら、面白いし、愛着も沸くし、大切に使いたくなる。
DIY感覚でハンドメイドのマイ漆器が作れたら、漆をもっと身近に感じてもらえるのでは。
それには工程も単純で、見た目にも価格的にもカジュアルな「拭き漆」の体験キットが必要かと。
キットと言ってもただ材料を梱包するだけでは、なかなか興味は沸かない。
でも私たち中年の硬い頭では、アイディアが浮かばない。
そこで相談したのが、京都の伝統文化を現代のファッションと融合させたり、職人の技や道具、継承の姿を様々な形で発信する「Whole Love Kyoto(WLK)」に所属する京都芸術大学の学生さんたち。
以前当社の工場見学に来て頂いたご縁もあり、彼女たちに相談してみることに。
漆を知らない学生の皆さんに、先入観の無い、若い感性でアイディアを募り、パッケージデザインをお願いしたら、どんな素敵なモノが出来るのか。もともと私たちの構想にあった「米袋」を使ったパッケージデザインというテーマで、WLK所属学生によるデザインコンペを開催することに。
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プレゼンの日。
机上に2案のデザインが並べられました。
予め彼女たちの中で絞られた2案。なのか、2名だけだったのかはあえて聞いてません(笑)が、共に創造力豊かな素敵なデザイン。しっかりプレゼンをしてくれました。
社内に持ち帰り、検討した結果、採用となったのは、疋田奈々帆さん(京都芸術大学芸術学部空間演出デザイン学科3年/WLK所属)のデザイン。
拭き漆に使用する生漆は、漆の木から採取される樹液そのもの。デザインはその生漆を採取する道具や、採取の際に木に残った傷跡、漆が入る桶、お椀やお箸などのイラストが散りばめられています。漆は15年の成木からわずか牛乳1本分しか採れない貴重な自然の恵み。採取する漆搔き職人、その道具や桶を作る職人がいてくれることに感謝し、この拭き漆をすることで、そういう縁の下の力持ちの存在も感じてほしいという想いが込められています。
私たちがこのキットのパッケージとして求めていたのは、ポップで可愛らしいデザイン。でもそこにはメッセージ性もあること。そして意外性。
2案ともに甲乙つけがたい素晴らしデザインでしたが、厳正な選考の結果、疋田さんの案に決定しました。
疋田さん、溝部さん、ありがとうございました。
説明書のイラストもインターン学生が。
監修はお馴染みsuosikki。
今回新たに販売開始するこの「ふきうるしキット」の前身は、2年前から販売している拭き漆スターターセット。生まれ変わった「ふきうるしキット」の販売開始をもって終了となりますが、この旧拭き漆スターターセットの説明書は、当時インターンシップで当社の職場体験に来てくれた、金沢美術工芸大学美術工芸学部の緒形蒔子さんが制作してくれたもの。わかりやすいイラストを描いて頂き、これまで説明書として活躍してくれました。
今回のふきうるしキットの説明書でも実は緒形さんのイラストを使わせて頂いています。
緒形さん、ありがとうございます。
ちなみに、この「ふきうるしキット」の監修、動画解説、説明書制作は、「金継ぎコフレ」の動画解説でもお馴染み、当社のパートナー「suosikki」の面々。いつもありがとうございます。
お陰様でこんな感じで「ふきうるしキット」が完成致しました。
学生さんが直接商品開発に携わる機会にもなるし、このパッケージデザインを通して、少なからず漆の事も知ってくれたはずです。少しは意味のある商品づくりが出来た気がします。
さあ、これからはこの「ふきうるしキット」を販売し、より多くの方々に『漆をもっと身近に』感じて頂けるようにPRしていきたいと思います。
皆様、引き続きよろしくお願い致します。
開発担当/堤淺吉漆店・森住健吾
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