漆の魅力・それぞれの視線

2017年4月 3年前の今日、

フランスから漆工場の撮影がしたいと映像作家のクリストとカメラマンのエイドリアンがやってきました。

その時の様子はこちらから

2人を連れてきたプロデューサーSHIN&CO青木さんとのこの時の再会が『urushi alaia project 』の始まりになるのですが、今回はこの映像を作ったクリストへのインタビューを紹介します。

異なった文化の異なった視点から撮られた彼らの映像や写真

まずはクリストの視点です。

エイドリアンの視点

photo by Adrien Daste

京都漆器青年会でご一緒している戸田蓉子さんはこれらに新しい漆の美を感じたそうです。

印象を受けた彼女からクリストへ彼の感じる漆や漆の美についての問いかけがありました。

長い時間をかけて返してくれた彼の言葉は映像と同じように詩的で自然や人がつないできた物への畏敬の念を感じました。

それは彼らが撮影にきたときの工場での丁寧な振るまいからも感じ取れた事でした。

以下がクリストの返事です

URUSHI  by Roussev Christo

My first contact with Urushi was when I entered Takuya’s workshop. For me Takuya was Urushi.

Sounds and textures immediately connected to my senses in a discovery of something completely new. A culture and history that I have never seen. Everywhere, visible signs of tradition and ancient knowledge, feeling the (unknown) age of all things there. This space seemed to have its own time and mysterious rules. 

The wooden machine, a magical invention, was the clock, ticking, and its hypnotic sound was marking the slow invisible transformation of the matter.

In this process, the infinite circles made by Takuya and the machines were defining a mystery that I could probably never understand, but strongly feel, a restless movement toward beauty and mystic, the fusion of man and nature. A mean for man to interact, touch and speak to nature.

It seemed so complex and precise in order to achieve perfection. 

Visually, the making of Urushi is an explosion of colors, constantly changing, playing with the light, pure abstract images so thrilling to watch or capture. Following the whole process, the transformation to the final step was fascinating.

 I liked the idea of creating a new shapeless skin for all forms and objects that somehow would preserve them from aging, in an elegant, extremely refined, almost supernatural way. For me Urushi was this idea of a profound respect and patience, for man to defy time and create heritage.

Takuya showed me how essential it was to redefine the role of Urushi in the modern world, for people to realize how precious and intimate this is, to be connected to nature, to teach the new generation how things can be preserved, protected and loved.

 堤淺吉漆店の奥の作業場に入った瞬間、僕は音と質感に包まれた。それは僕にとって、とりわけ僕の感覚にとって全く新しいものだった。僕の知らない文化と歴史がそこにあった。いたるところに伝統と古くからの知恵を感じた。どれくらい古いかなんて、ちっともわからなかった。この空間には固有の時間が流れ、神秘的なルールに統べられているようだった。

 魔術の道具のような木造の機械*は、僕を眠りへと誘う音で時を刻む。そこでは何かが目に見えないほどのゆっくりと変容を遂げている。

卓也と機械によって、ここに永遠の円環が生み出される。それはたぶん僕には決して理解できない神秘だ。でも強く感じる。その絶え間ない動きが美と神秘性に達することを。人と自然の融合。自然と交わり、自然に触れ、対話するという営み。そこで行われる一連の行為はこの上なく複雑で精密だった。きっと完璧へ達するためだろう。

 視覚的には、漆の精製は色の炸裂である。変化自在、光と戯れる。瞬く間に変化してゆく純粋な抽象をとらえるのは僕にとって大層スリリングだった。僕の目はすべてのプロセスを追い続けた。最終段階へと漆が姿を変えてゆく様にすっかり心を奪われた。

 僕は、あらゆる形をもつ物体に漆が“新しい肌”を与える、というアイデアがとても気に入った。しかしそれはどういうわけか、経年劣化からその物自体を守ってくれる。エレガントで極度に洗練された、素晴らしく自然な方法で。僕にとって漆とは、大いなる敬意と辛抱強さが込められたものに思えた。人類は懸命に過ぎ去る時に抵抗し、後代への遺産を創ってゆくのだから。

 卓也は、現代において漆の役割を再定義することがいかに重要かを教えてくれた。人々にとってどれだけ漆が尊く親しいものかを気づかせるということだ。自然と繋がっているために。とりわけ新しい世代にどのように物事は保存され得るのか、守られ得るのか、そして愛され得るのかを伝えてゆくために。

*クロメ機(漆の精製機械)のことと思われる

訳:戸田蓉子 urushi-media.com

 

漆の魅力とはなんだろう? 

塗膜の美しさ、美しさを加える人の手、時間とともに変わってゆく艶、人が五感で感じる何か

人が太古から使い繋いできた漆

クリストやエイドリアンが感じたように漆には使う人、感じる人それぞれにとって無限の魅力があるのかもしれません。

japon 2017-0469.full resolution.jpg

右:ルセーヴ・クリスト Roussev Christo | Filmmaker https://christoroussev.com

左:エイドリアン・ダステ Adrien Daste | Photogapher http://www.adriendaste.com/

asakitichi tsutsumi