京都市立芸術大学漆工専攻の若林綾さん スカイランニング日本代表として世界選手権へ
京都市立芸術大学美術学部漆工専攻4回生の若林綾さん(22)が7月30日・8月1日にイタリア中部のアブルッツォ州、グラン・サッソで開催される「2021スカイランニングユース世界選手権大会」に日本代表として出場する。
スカイランニングとは、標高2000m以上の山脈を舞台に、山頂を目指して駆け登る山岳スポーツ。空気の薄い高山で、足場の悪い山の急斜面を走り抜けるサバイバルレース。山の変わりやすい天候、時には雪道を走る事もある過酷な競技。ヨーロッパでは人気の高いメジャースポーツの一つ。
若林さんは、2020年10月11日に開催された選考レース「第6回 尾瀬岩鞍バーティカルキロメーター」23歳以下ユース女子部門で準優勝し、世界選手権U(アンダー)23カテゴリー日本代表に選出。今大会は、3.5㎞の短い距離で標高1000mを駆け上がるバーティカル部門と21㎞という長距離で2300m(※累積で)もの標高を走るスカイ部門の2種目にエントリー。目標の表彰台を目指す。
実は昨年も世界選手権出場が決まっていた若林さん。しかし、新型コロナウイルスが世界中に猛威を振ったことで中止を余儀なくされ、悔しい思いをした。その分、今大会にかける想いは強い。大学卒業後は本格的にスカイランニングの選手として活動することを目指しており、今回のユース世界選手権はその試金石と捉える重要な大会。満足のいくレースで今後に弾みを付けたいところだ。
トレーニングと大学生活の両立。
競技費用はパン屋さんのアルバイトで。
普段の練習は、毎朝5時40分から約1時間。大学や自宅から近い、京都市内の小倉山や松尾山の10㎞ランが日課。週1回は自転車トレーニングも取り入れている。平日は自宅近くのパン屋さんでアルバイト。競技に必要なウエア代やシューズ代、遠征費などを稼いでいるという。土日は所属するTEAM・SKY・KYOTOの練習会に参加。今回の世界選手権日本代表に4名も名を連ねる名門チームで実践トレーニングを積んでいる。
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大阪市枚方市出身。幼い頃からものづくりと走る事が大好きだった。中学校では剣道部。高校では陸上部に所属。高校時代に山道などの未舗装地を走るトレイルランに出会い、その魅力を知った。大学は体育系か芸術系か迷ったが、美術の先生の助言もあり、京都市立芸術大学に進学。漆工専攻に進み、主に木工で制作活動を続ける一方、トレイルランよりさらに過酷なスカイランニングに挑戦。短期間で日の丸を付けるまでに成長した。
山・木・漆。目の前の大自然や天然素材との対話。
若林さんにとってスカイランニングは自然との対話。四季の景色や動物の気配、植物の息吹。「目の前の自然にどう向き合うか。山に自分を合わせていく感覚」。それは、木や漆といった自然素材を使う、自身の制作活動にも似ているところもあり、「今は競技も制作も両立出来ていることが、相乗効果をもたらしている」と話す。
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7月19日までは、京都芸術大学前期展が開催されていた。もちろん若林さんの作品も展示。トレーニングの疲れは言い訳にせず、制作にも妥協なきストイックさ。今回の作品には漆は使われていないが、漆は大好きで、毎日の食事は自分で塗った漆器で。イタリアにも持参するとのこと。
出発は24日。東京オリンピック真っ最中だが、時を同じくしてイタリアでは、小さな身体の木工・漆芸女子が、世界最高峰の山脈、グラン・サッソの頂きを目指して奮闘する。
株式会社堤淺吉漆店は若林綾選手を応援します。
※取材はリモートで行っております。
※競技写真は若林さんからご提供頂いています。
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【筆者】
株式会社堤淺吉漆店・森住健吾 Facebook Instagram
プロフィール
神奈川県南足柄市出身。私立桐光学園高等学校にサッカーのスポーツ推薦で入学。在学中、インターハイ3位、全国高校サッカー選手権大会準優勝。日本高校選抜選出。その後、専修大学に進学。体育会サッカー部所属。関東大学サッカーリーグ2部新人賞受賞。卒業後は、仕事とサッカーを両立できる京都の佐川印刷株式会社に就職(サッカーで)。日本フットボールリーグ(JFL)に所属し、選手として活動しながら、人事部にて採用活動に従事。度重なる大けがで2度の手術を経験。サッカー選手を引退し、退職。地元神奈川に戻り、高校時代に取材を受けた株式会社タウンニュース社に就職。茅ヶ崎編集室・厚木編集室にて記者・副編集長を兼務。入社2年後に結婚。相手は遠距離していた京都の漆屋の娘。2児の父となり、そして今、なぜか漆屋で働いている。